麻の豆知識

May 06, 2026
  by YUINE

麻ってなに?

リネンの原料:フラックスの花

日本語で「麻」というと、亜麻/あま(リネン)・苧麻/ちょま(ラミー)・大麻/たいま(ヘンプ)・黄麻/こうま(ジュート)・マニラ麻など、麻という字のついたものをイメージしますね。なので「麻」という種類の植物があると思っていらっしゃる方が多いと思います。 この表をごらんください。

見ての通り、アマ科、イラクサ科、アサ科……と、見事にバラバラです。 その理由は、日本の歴史的な背景にあります。

古来、日本で「麻」といえば、自生していた「大麻(ヘンプ)」や「苧麻(ラミー)」を指していました。(大麻と苧麻も植物学的には一括りにならないのですけどね。) 明治以降、ヨーロッパから「リネン(亜麻)」が入ってきた際、それまで日本で使われていた「麻」と性質が似ていたために「亜(つぐ)麻」という名前がつき、ひとくくりに「麻の仲間」として定着してしまったのです。

「麻」という名前がついているからといって、同じ兄弟植物ではないのですね。

 

麻って英語だと どうなるの?

外国人の方に日本人にとっての「麻」という括りを英語で説明するには、



In Japanese, the word 'Asa' is a collective term for various types of strong plant fibers, rather than a single plant.
(日本語の『麻』は、単一の植物ではなく、様々な種類の強い植物繊維を指す総称です。)

It primarily refers to bast fibers, such as linen, ramie, and hemp.
(それは主に、リネン、ラミー、ヘンプといった『靭皮繊維(じんぴせんい)』を指します。)

While they are different plants botanically, we group them together because of their shared characteristics: they are all durable, breathable, and have a unique crisp texture.
(植物学的には別物ですが、丈夫で通気性が良く、独特のシャリ感があるという共通の性質を持っているため、私たちはそれらをグループ化しています。)



というふうになるそうです。

日本語でまとめて見ると、
「日本では、リネン、ラミー、ヘンプを含むすべての靭皮・葉脈繊維を、天然植物繊維としての機能的な共通点に注目して、『麻』という言葉で呼んでいます。」

びっくりですよね。 海外では日本の「麻」という感覚はないのですね。

例えば、私たちもよく知っている「リネン」の場合は、「リネン(Linen)」と「フラックス(Flax)」という2つの呼び名があり、海外ではこれらを明確に使い分けています。原料として呼ぶ場合は、フラックスという植物の名前で呼びます。そして、糸・布・製品の状態はリネンと呼びます。

ラミー(苧麻)は、海外でもそのまま「ラミー(Ramie)」と呼ばれます。発音は「レイミー」に近い響きらしいです。ラミーは植物名も繊維名も一貫して「ラミー」と呼ばれるのが一般的です。ただ、アジア圏をルーツとする繊維であるため、歴史的・地域的な背景によって別の呼び名が使われることもあります。欧米では、古くからラミーのことを「China Grass(チャイナ・グラス)」と呼ぶこともあります。

ラミーは日本にも自生していましたから、古くから「からむし」や「お(苧)」と呼んで親しまれてきましたが、これはあくまで日本国内の呼称です。
ラミーはリネンと並んで「Bast Fiber(靭皮繊維 —じんぴせんい— )」の双璧を成す存在として、世界中でその強さと機能性は高く評価されています。

 

靭皮(じんぴ)繊維ってなに?

植物の茎を輪切りにすると、一番外側に「表皮(皮)」があり、そのすぐ内側に細くて強い繊維が並んでいます。
これが「靭皮(じんぴ)」です。 茎の「芯」の部分は硬くて使えないため、皮の部分だけを剥ぎ取り、水に浸けたり発酵させたりして余分な不純物(ペクチンなど)を取り除きます。
そうすると、最後に強靭な繊維の束が残ります。
これが私たちが糸や布として使っている繊維です。

靭皮繊維の特徴は、次のようなものになります。


● 非常に丈夫: 植物を支えるための組織なので、引っ張る力に強い。 

● もともと水分を通すための場所だったため、水を吸いやすく、すぐに乾く。

● 繊維がしっかりしていて硬いため、肌に触れるとひんやり涼しく感じる。



日本で「麻」と呼ばれる靭皮繊維には、リネン(亜麻)・ラミー(苧麻)・ヘンプ(大麻)・ジュート(黄麻)などがあります。

 

それ以外の麻ってなにがあるの?

日本語で「麻」と呼ばれているもののうち、茎の皮(靭皮)ではなく、「葉」や「実」や「種子」から繊維を採る仲間もいます。

 

【葉脈繊維(Leaf Fibers)】

葉っぱの中に通っている「筋」を取り出したものを葉脈繊維(Leaf Fibers)と呼びます。茎から採れるリネンやラミーなどよりも、太くて硬いのが特徴です。

マニラ麻(アバカ)が有名です。バナナの仲間でバショウ科の植物です。水に強く、海水に浸かっても腐りにくく、非常に軽くて丈夫です。昔は帆船のロープに使われました。現在は日本のお札(日本銀行券)の原料として有名です。仲良くしたいですね。また、高級なハット(麦わら帽子風)や壁紙にも使われます。

サイザル麻も有名ですね。摩擦に非常に強く、ガッシリとした硬さがあります。住宅用のラグマット、キャットタワーの爪とぎ、荷造り用の紐、ダーツボードなどに使われています。

 

【果実繊維(Fruit Fibers)】

実を守るために、実の周りを取り囲んでいる繊維です。 ヤシ麻(ココヤシ/ココア)をご存知ですか?ココナッツの実を取り囲む、剛毛のように硬く、弾力性があり、水に濡れてもすぐ乾く繊維が採れます。玄関マット(ココマット)、泥落とし、タワシ、土木用の防食ネットなどに使われます。

 

【種子毛繊維(Seed Fibers)】

実の中にある「種」を運ぶための産毛を利用するものです。 カポック(木棉)があります。カポックの木になる実の中に詰まったわた状の繊維です。その繊維は細くて短く強度が弱く、中が空洞でワックス質のため、糸に紡ぐことができませんでした。ですが、非常に軽くて撥水性が高く、中に空気を多く含むため保温性があります。救命胴衣の詰め物、防寒着の中わた、枕やクッションの詰め物素材として使われています。

 

実は、日本に「コットン(綿)」が入ってくる前、「モメン」という言葉は「カポック」や「キワタ(木に成るわた)」を指していました。
古来 日本には「草のわた(コットン)」がありませんでした。そのため、木に成るフワフワしたものを「木に成るわた」=「木綿(きわた/もめん)」と呼んでいたのです。 平安時代から戦国時代に「草のわた(コットン)」が伝わった際、その便利さから「もめん」という呼び名が、そのままコットンの方にスライドして定着してしまったのです。

「本来の「木に成るわた」は、コットンと区別するために「木棉(もくめん)」や「パンヤ」、「カポック」と呼ばれるようになり、私たちが良く知るコットンは、そのまま「木綿(もめん)」という漢字が当てられ続けました。」とのこと。これまたびっくりですね。

 

麻の太さランキング!

日本語で「麻」と呼ばれているものを一度繊維の細さ順に並べてみました。比べやすいように特別ゲストとして、植物から採れるのに麻とは呼ばない「コットン」も入れてみました!

◎ カポックの特異性

カポックは「リネンやコットンよりも細い」という驚きの細さを持っていますが、繊維が短く、中が空洞でワックス質のため、単体で糸にするのが非常に難しく、その細さを「軽さ」や「浮力」としてしか利用できませんでした。今では、コットンと一緒にカポック混という形でおしゃれな衣料もいっぱい出ていますね。

 

◎「衣類」と「資材」の境界線

ヘンプ(大麻)あたりまでは、細く精製することで「衣類」として素肌に触れることができますが、ジュート(黄麻)を超えると一気に太く硬くなり、用途が「袋」や「ロープ」などの資材へと変わります。

 

◎「太さ」がもたらす「涼しさ」

ラミーがリネンより少し太いことで生まれる「シャリ感」は、肌との間に隙間を作り、空気を通すために役立っています。日本のような高温多湿な環境では、あえて「少し太くてコシのある繊維(ラミー)」を好んで使ってきた歴史があります。

 

◎ 葉脈・果実繊維のパワフルさ

マニラ麻やヤシ麻は、もはや「糸」というより「紐(ひも)」に近い太さです。これらは衣類にはなりませんが、その太さがあるからこそ、何十年も耐えるロープやマットとしての役割を全うできるのです。
ちなみに、日常的に「麻紐(あさひも)」として売られているものの多くは、「ジュート(黄麻)」で出来ています。

 

「麻」という一言で括られていても、ミクロの細さを持つカポックから、目に見えて太いヤシ麻まで、植物は部位ごとに全く異なる「太さの魔法」を使い分けていることがよくわかりますね。

 

品質表示の麻は「リネンとラミー」だけ?

家庭用品品質表示法という日本のルールで、「麻」とだけ書いていいのは「リネン」と「ラミー」の2種類だけと決まっているのです。 
ヘンプの場合は「植物繊維(ヘンプ)」や「指定外繊維(ヘンプ)」という書き方をしなければなりません。

なぜこの「リネン」と「ラミー」だけが「特別扱い」をされているのか?ですよね。

まずは衣類を中心に基準を決めたようです。

洋服を買うとき、「麻」という文字を見ると「さらっとして涼しいんだろうな」「洗うほどに馴染むんだろうな」とイメージしませんか?

実は、リネンとラミーは数ある植物繊維の中でも、衣類にしたときにトップクラスの「柔らかさ」と「肌触りの良さ」を持っています。

もし、もっとザックリして硬いヘンプ(大麻)や、麻紐に使われるようなジュート(黄麻)まで「麻」という名前で売られていたら、買ってみて「あれ?思っていたのと違う…」というガッカリが起きてしまいますよね。

古くから越後上布(新潟県)や宮古上布(沖縄県)のように日本の高級な着物に使われてきた「ラミー(苧麻)」と、明治以降に上品な洋服文化を支えてきた「リネン(亜麻)」。
この2つは、日本の長い歴史の中で「肌着や服にして、ずっと肌に触れていても大丈夫」という信頼を築いてきました。その「衣料品としての王道」の証として、「麻」という一文字を名乗ることが許されているのです。

最近は、サステナブルな素材として、タグに「植物繊維(ヘンプ)」や「植物繊維(カポック)」と書かれたおしゃれな服も増えています。

これらは、法律上は「麻」とは書けませんが、それぞれにリネンとは違う「かっこよさ」や「驚くほどの軽さ」といった魅力がありますね。

フラックスの花(リネン)

ラミーの葉

ヘンプの葉

カポックの葉と実


それにしても全然違う植物なのですね〜。

でも、全部植物のチカラなんですね。

 

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